陶芸家 江口滉
喫茶の歴史10
写真は、ビルマのペグーというところにある釈迦の横臥像で、一〇世紀の末ころに作られたものです。この地域の人々は仏像を大切にして、絶えず補修の手を加えて、創建当時の姿を保存しようとしています。私たち日本人の多くは、このような像を見て、美しさに感動したり、信仰心を喚起されることは少ないだろうと思います。それよりは、薄暗いお堂の中で、作られた当初のきらびやかな装飾がすっかり剥げ落ちて、ローソクや線香の煤煙で燻された、やや崩れかけた仏像にこそありがたい美しさを感じ、信仰心が起こるのではないでしょうか。
日本人には、「わび・さび」という美意識があります。「わび・さび」とは、一体どのようなものでしょう。手元にある数冊の辞書で調べてみました。
◇わび(侘)=失意、絶望のさま 貧しいさま 興ざめ 不足 つらく思う 悲しく思う 困る
◇わび(詫)=過失や人に迷惑をかけたことを謝ること
◇さび(寂)=淋しい 静かで心細い 色あせる 衰える 時間の経過によって劣化した様子(錆) 悪いことをした報い(身から出たサビ)
こんな言葉が並んでいます。
「わび・さび」は、もともと華やかな明るいイメージとは正反対の言葉です。万葉集(奈良時代)や古今集(平安時代)にも「わび」という言葉は出てきますが、いずれも失意の状態、落ち込んで立ち上がれない状態を表現したものです。
ところが室町時代の中ころになって「わび」が、静かな落ち着いた味わい、枯れて渋みのあること、古びて趣のあることなどといった美しさの一表現として使われるようになりました。
室町時代の中ころは、下克上(げこくじょう)の時代といって、伝統的な権威や価値体系を否定して、武力によって権力の座を奪い合う、きわめて不安定な時代でした。一方に勝者があれば、他方には必ず敗者がいます。勝って成り上がっていく側には、野暮な絢爛豪華があれば、敗れて成り下がる側の一部には「わび」がありました。敗北は失意落魄です。敗者の多くはそのまま消えてしまったでしょうが、中には自暴自棄にならずに踏みとどまることのできる人もあったに違いありません。それは、俗世の権力や富を否定し、清貧を潔(いさぎよ)しとする禅宗の哲学があったからでしょう。
「わび」の美意識は、敗れたものだけに発生したのではなく、この時代の社会現象でもあったのです。失意の境涯にある場合ばかりではなく、実力競争や権謀術数、栄枯盛衰にはかなさを感じ、そのような渦中には近づくまいとする人々も大勢いたことでしょう。
このような風潮の中で、珠光が一休に出会って教えを受けたことは、茶の湯の世界に「わびの美意識」がとりいれられる画期的な変化をもたらすきっかけとなったのです。
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